
新しいSRにとって最大の変化は、フューエルインジェクション(FI)と排気触媒の採用です。厳しい環境性能が求められるなか、空冷単気筒4ストロークエンジンという、シンプルで普遍的なメカニズムを持つSRで走り続けるには、SRも進化しなければなりませんでした。しかしデビューから30年以上もの年月を経ても、多くのファンに支え続けられているSRの太い幹は変えてはならない。「SRであり続けること」。それが開発時のテーマでした。
その太い幹とは、SRらしいスタイリングと、SRらしい乗り味です。
FIを採用するためには、キャブレター仕様車にはない、様々なパーツを装着する必要があります。そのパーツをいかに収めるか。非常に苦労しました。その際たるものが燃料ポンプです。
燃料タンクから自然落下するガソリンを、エンジンの負圧によって空気と混ぜ、混合気としてシリンダーに送り込むキャブレターと違い、FIは走行状況やライダーの意志を判断し、そのときに必要な混合気をプログラムで作り出し噴射します。この噴射のために、ポンプが必要なのです。
FIの燃料ポンプは、その多くがガソリンタンク内に収められていますが、SRのティアドロップ型タンクにはそのスペースがありません。タンク中央に、オイルタンクを兼ねたメインフレームが通っていて、タンク底部が想像以上に狭いからです。
そこでガソリンタンクから離れた場所に燃料ポンプを設置しました。さらにその燃料ポンプを内蔵するため、小型のサブタンクも新作することにしました。
その置き場所はサイドカバー内側しかないと考えていたのですが、そこにはバッテリーやレギュレーター、エアクリーナーボックスがあり、それらのパーツとどう共存するかが大きな問題となりました。
セルを持たないSRのバッテリーは小型で、さらにコンパクト化するのは難しいし、レギュレーターは、FI化に伴う使用電力の増加で大型化せざるを得ません。さらにエアクリーナーは大幅な形状変化が難しいのです。
そこでバッテリーはシート下に移動しました。それに伴いシートベースとシートを新作しています。しかし、シート外形や後端の樹脂カバーはこれまでと同じとしました。
大型化したレギュレーターはエンジン下に配置しました。エンジン下でフレームダウンチューブが2本に別れているので、その間に収めています。レギュレーターは電気を通すことで発熱するので、外気に当て冷却しなければなりません。エンジン下なら冷却効率も高く目立ちませんので大きくなったレギュレーターを収める場所はそこしかありませんでした。
エアクリーナーボックスは、新しく作り変えました。エンジン性能に影響が出るのでスペースを確保するために容量を小さくしたり、別の場所に移動させたりすることはできないですから。まさにmm単位で形状や容量を検証しています。その結果、エアクリーナーエレメントの形状も変更しました。
しかし、それでも以前のサイドカバー内側スペースのままでは、新たなパーツを収めることができず、そこで左右各10mmほど張り出したサイドカバーを新作せざるを得ませんでした。ライダーが跨って違和感を感じないことはもちろんですが、SRらしいシルエットを崩さないよう、その形状を徹底的に吟味しています。

